5月5日付けで、NYT紙は「トランプ大統領、プーチン大統領はじめ独裁政治家と共通するメディア戦略」と報じている。

 トランプ大統領、プーチン大統領、エルドガン大統領(土)、チャベス大統領(ベネズエラ)には、独裁政治家として共通するメディア戦略がある。ハーバード大学教授のSteven Levitsky氏、Daniel Ziblatt氏の近著「民主主義の崩壊(How Democracies Die)」にあるように、現代の独裁政治家は、批判的な新聞・TVに自ら直接、手を下すようなことはしないで、様々な圧力をかけ、友人に分け前を与える形で、メディアを支配させる。

①2009年、エルドガン政権に批判的なメディアグループを率いていたDogan Yayin氏に250億ドルの追徴課税を課し、グループの解体を仕掛け、先月には、同氏が持つ有力紙Hurriyet紙、CNNトルコをエルドガン支持派に売却してしまった。

②プーチン大統領は、批判的な独立系TVネットワークNTVの所有者Vladimir Gusinsky氏を脱税容疑で捜査し、最終的にNTVを国営企業に売却させた。

③チャベス大統領(ベネズエラ)は、政府に批判的なGlobovision社の所有者Guillermo Zuloaga氏を不当利得容疑で捜査し、2013年、チャベス大統領の後継者マデューロ大統領の側近に売却させた。

④トランプ大統領は、ワシントン・ポストの所有者であるアマゾンCEOのJeff Bezos氏を、「政府に税金をほとんど払っていない」、「米国郵政公社はアマゾンの小包配達で銭失い」、「ワシントン・ポストは、アマゾンのロビーイストとして登録すべき」と間違った理由を挙げて、ツイッターで非難し始めた。

 ワシントン・ポストのロビーイスト登録要求を土曜日に投稿したのは、情報筋によれば、直前にワシントン・ポスト紙のPhilip Rucker記者が「ムラー特別検察官、ポルノ女優、不当利益など、トランプ大統領のビジネスに包囲網」とネガティブ記事を書いたことが原因とのこと。

⑤トランプ大統領は、リベラル・メディアを「偽ニュース」として批判するとともに、シンクレア放送グループなどの保守系メディアを賞賛している。シンクレアは、最近、「偽ニュース」に関し、同社のアンカーを通じ、トランプ大統領と同じようなスタイルで警告(「メディアの一部には、米国民の考えを明らかにコントロールしようとして、バイアスのかかったメディアの個人的な主張を流している」)を流すよう、傘下の約200の地方局に指示を出したことが明らかになっている。

 シンクレアの地方局指示の後、トランプ大統領はツイッターで同社を擁護し、「シンクレアは、CNN、NBCより遥かに優れている。すべてはジョークだが」と書き込んだ。

 シンクレアのトランプ政権宣伝は、独裁政治に移行していった他国の例に見られるように、競合する他のリベラル・メディアに対する信頼も失わせる結果となる可能性がある。

⑥トルコ生まれのMIT経済学者Daron Acemoglu氏によれば、「トルコやロシアでは、政権批判的なリベラル・メディアへの攻撃とともに、その他の独立的な新聞・TVメディアにも攻撃が行われ、現在では我々が「偽ニュース」と呼ぶようになったものが氾濫するメディア環境を作ってしまった」とのこと。

⑦トランプ政権誕生で、米国も、独裁国家が辿った、「偽ニュース」によって国民が間違った方向選択をしかねない道を辿ろうとし始めている。

素敵なメディア研究所

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