NYT紙は、12月5日、「量子コンピューターは、暗号化技術を破る技術も持つが、他方、個人、企業、国家のデータ を保護する量子コンピューター技術も研究されていて、中国はこの先端分野で米国を凌ぎ、米国は追
グーグル、アリババなど世界の先端技術企業が量子コンピューターの開発で凌ぎを削っている。量子コンピューター
はデジタル情報を守る暗号化技術を破ることができ、電子商取引や政府のデータベースも危機に追いやられる可能性
がある。
しかし、他方で、量子コンピューターにおけるセキュリティー技術の研究者もおり、中国はこの分野で、明らかに
米国を凌ぎ、世界をリードしている。特に中国はAIのような先端分野も持っているため、中国政府は、西側世界とは
異なる量子コンピューター関連の研究に高い優先順位を置いている。
量子コンピューターの暗号化ネットワークの建設が長距離でも可能か、まだ現段階では保証はない。長距離ネット
ワークには大規模の投資が必要になる。昨年、中国は「Micius」と呼ばれる衛星により、量子コンピュータ暗号化
技術を使った動画伝送実験を北京―ウイーン間で行った。また、昨年、計画と建設に4年かけ、北京―上海間の専用
線で量子コンピュータ通信ネットワークを実用化した。
現在のところ、量子コンピューター暗号化ネットワークは、距離制限があり、衛星を使えば、北京―ウイーン間の
ように4630マイルという記録を打ち立てることができるが、地上の場合、光ファイバーでも上限は150マイル。
中国政府は量子コンピューター暗号化ネットワークに巨額の投資を行っている。中でも、中国科学技術大学が打ち
上げた「Micius」衛星とその接続地上ネットワーク1200マイルに大きな注目が集まっている。安徽省と山東省が
8000万ドル投資した光ファイバーネットワークなど、主要なプロジェクトには中国政府が高レベルの支援を行って
いる。今後、都市や地方に広がり、2030年には中国全土を量子コンピューターの暗号化技術を持ったネットワーク
で覆いつくす計画だ。
これまでの通信技術では、あらゆるポイントで盗聴やハッキングが可能だったが、量子コンピューター暗号化ネッ
トワークでは、例えば北京―上海間で、20数ポイントに脆弱なポイントを減少させることができるとのこと。
ところが米国の実態に目を転ずると、米国では政府も企業も、量子コンピュータ―暗号化技術は、まだ実験室
レベルの段階で、研究者も、量子コンピューターに対応する暗号化の計算式には、既存の数学を使っている有様で、
この段階に留まる限り、新しいネットワーク・インフラを必要としない。
このままの状況が続けば、米国は5年後にはもはや中国に追いつけなくなる。
南カリフォルニアのスタートアップ企業Qubitekkは、テネシー州の電力網のセキュア化のために量子コンピュ
ーター暗号化技術を使っている。2つ目のスタートアップ企業Quantum Xchangeは、北東エリアでウオール街の
銀行などの利用を狙って、量子コンピューター暗号化ネットワークを建設した。3つ目は、Stony Brook大学の
Long Island研究所がベンチャー企業を作ったぐらい。
米国のスタートアップ企業中心の量子コンピューター暗号化技術では、中国の政府主導で大金をつぎ込むイン
フラ整備に対抗できない。実は米国の専門家が最も重要と注目する研究所は、エネルギー省のシカゴ研究所が行っ
ているネットワーク実験で、中国のインフラ整備を凌駕する可能性がある。
Los Alamos国立研究所、Oak Ridge国立研究所も、Qubitekkと協力し、量子コンピューター技術を使って電力
網のセキュア化を図ろうとしているし、Quantumm Xchangeも、その設備をLower Manhattan地区のインター
ネット・ハブがあるウエスタン・ユニオン電信ハブ(NY州)に移し、マンハッタンーニューアーク間に量子コン
ピューター暗号化ネットワークを建設中で、2つの都市間の銀行ネットワークをつなぎ、その後、東海岸全体に
広げる計画。
シカゴ大学の研究者などは、量子コンピューターネットワークの「レピーター」と呼ばれる、暗号化技術を利用
拡大できるデバイスの高度化を研究している。現在はまだ研究段階だが、数年後には実現可能との自信を示す。
量子コンピューター通信技術は、新たなハードウエアとして広大な光ファイバー・ネットワークと恐らく衛星、
さらに個々の光子(photon)を識別できるデバイスが必要になる。この光子を識別するデバイスは、米国では、
Princeton Lightwave社(NJ州)のみが供給可能で、スタートアップ企業も同社から購入している。
このPrinceton Lightwave社は、今年4月、識別デバイス・ビジネスを中国企業RMY社に売却した結果、
Qubitekkなども供給不足に陥っている。最近、製造問題を理由に、追加の識別デバイスを来年3月まで供給でき
ないとRMY社から言われたそうだ。
欧州の中小企業も同様の識別デバイスを売っているし、世界中の研究所ではもっと高度なハードウエアが開発中
だが、現在、特に米国では供給体制が細っている。
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