NYT紙は、9月4日、「オーストラリア、暗号化技術を破る政府監視強化法案を今月提案」と報じている。

 暗号化技術の発達で、従来であれば盗聴可能であった情報の入手が不可能となり、各国の情報機関を悩ま せていたが、米、英、豪、加、NZからなる英語圏の情報機関「Five Eyes」の先頭を切って、今月、オース トラリアが政府監視強化を狙い、暗号化技術を破る国家監視体制の提案を行う予定。  今月、オーストラリアで開催される次回「Five Eyes」の会合前に公表される予定で、オーストラリアで 試行の後、うまく行けば、世界各国に広がる可能性がある。  法案では、「指名通信提供事業者(designated communications providers)」に関する措置が盛り込まれ る。同事業者は、ウエブサイトを運営する事業者で、情報・法執行機関に対し、暗号化された通信へのアク セスを支援する義務を持ち、暗号化技術を破る機器やソフトウエアの装備を義務付けられ、その開発の最新 情報を情報・法執行機関に通知しなければならない。  要するに、政府監視機関は、テクノロジー企業の協力を得たり、義務付けを行うことで、暗号化技術を 迂回することが可能となり、「バックドア」ではないと主張できる根拠を与えるとともに、法案では、企業 にシステム的に弱いものを作るよう要求することを禁じている。しかし、この禁止規定は曖昧だし、政府 監視機関の情報公開や、問題が発生した場合の説明責任は極めて限られたものとなっている。  昨年、英国の国民健康サービスに端を発し、世界をランサムウエアで混乱させたWannaCryの例を見ても 明らかだ。マイクロソフトのソフトウエアの脆弱性を利用されたが、マイクロソフトによれば、米国のNSA (National Security Agency)は、事件発生より前に脆弱性を発見していたにも関わらず、それを公表して マイクロソフトに改善させることを拒否した。  その結果、脆弱性情報が外部に盗まれ、事件発生となったが、その際、NSAが行ったことは、脆弱性の 存在を認めただけ。  WannaCryの例は、情報機関が結局、自らの利益を優先することを物語っている。  もし、情報・法執行機関に対し、暗号化技術を破る機器やソフトウエアを作る権限を与えてしまうと、 結局、我々は、我々自身を危険に晒してしまうだけだ。  特に、豪州政府は、最近、医療データが漏えいしたり、軍事情報がハッキングされたり、機密文書が 古い家具タンスの中に一杯詰まっているのが発見されたり、データ保護に関し、評判が良いとは言えず、 もし豪州の政府監視機関から暗号化技術に関する情報が漏えいすれば、それを、腕利きの犯罪者は容易に 手に入れることができる。 

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